日米の消費者物価指数(CPI)が生活実感より低く算出される背景には、エネルギー補助金に加え、統計設計上の構造的歪みが存在する。最大の要因は、指数内で突出した比重を占める「持ち家の帰属家賃」の上昇率が実態から乖離して抑制されている点にある。
帰属家賃とは、持ち家居住者が「自己所有の住宅を市場で借りた場合に支払う想定賃料」を試算した架空の消費コストである。日本において持ち家世帯比率は約6割(61.2%)、帰属家賃の総額は約60兆円と、家計消費支出349兆円の17.2%を占める。CPI総合指数においても16.0%(10,000分の1,598)と単一品目で最大のウエイトを持つ。
現在、不動産実勢価格は大都市圏や特定開発地域を中心に急騰している。しかし、帰属家賃の算定は改定の遅い「既存契約賃料」を参照するうえ、木造住宅の経年減価償却や地方の賃料停滞と合算されるため、統計上の上昇率はほぼ0%近傍(前年比0.1〜0.5%)に固定化されている。この巨大な重しに加え、価格が約1.5倍に高騰した生鮮食品(肉・魚・野菜・果物:推計約30兆円)を除外するコア指数の設計が重なり、公表インフレ率は2.0%程度へと抑制されている。これが日銀の政策金利1.25%設定を正当化する論拠となっている。
米国でも個人消費の約30%を占める帰属家賃の上昇率がマイナス0.1%と算出されるなど歪みは共通しており、この算定構造が日米ともに物価統計を人為的に沈静化させ、生活実感との乖離を生む主因となっている。
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