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投資家 | 金融ライター
米雇用統計下振れで利上げ観測後退、資金循環に変化生じ日経平均は一時6万7000円回復
⸻ ◆米雇用市場の減速鮮明化で9月の利上げ観測が急速に後退 米労働省が発表した7月の雇用統計は、非農業部門雇用者数が市場予想の8万3000人増を大きく下回る2万3000人減となった。さらに過去2カ月分の統計も合計10万3000人下方修正され、労働市場の減速が事前の想定を上回るペースで進行していることが明らかになった。失業率は4.1%に上昇し、労働参加率はコロナ禍の時期を除けば1976年以来となる約50年ぶりの歴史的な低水準に沈んだ。一方、平均時給は前年比3.2%の伸びにとどまり、懸念されていた賃金インフレの鎮静化を示唆している。市場参加者の多くは、これを一時的な下振れではなく構造的な景気減速のサインと受け止めている。この結果を受け、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)のフェドウオッチが示す9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での金融政策見通しは急変した。発表前は利上げ確率が55〜60%でメインシナリオとされたが、発表後は政策金利の据え置きが優勢となり、利上げ確率は40〜44%へ急速に低下した。市場の関心はすでに12月の会合へと移りつつあり、米国債利回りも2年債が4.15〜4.16%台、10年債が4.64%台へと低下して推移している。 ◆米国市場では半導体からソフトウェア・サービスへ資金移動 金利見通しの変化と景気動向の再評価に伴い、米国株式市場全体の資金配分にも顕著な影響が及んでいる。これまでAI開発の基盤を担う半導体関連株に一極集中していた投資マネーは、実際のビジネスで収益化を進めるソフトウェアやサービス関連企業へとシフトしつつある。データ分析大手のパランティア・テクノロジーズは、売上高が前年同期比93%増となり通期見通しを上方修正したことで株価が一時30%超上昇した。また、クラウド事業が好調なマイクロソフトが決算翌日に一時15%超上昇し、サービスナウやオラクルも同様に買われた。市場関係者は、投資家の評価基準がAI設備投資の規模から、実際のキャッシュフロー増加を見極める段階へ移行したと分析している。他のセクターでも資金の分散が進行し、宇宙開発のスペースXではロックアップ解除後もショートカバーが優勢となり関連銘柄に波及。肥満治療薬の需要を背景にイーライリリーが買われ、中東情勢の緊張緩和期待から金価格も1オンス4300ドル前後へ上昇した。オープンAIの次期モデルを巡る懸念からサイバーセキュリティー関連のパロアルトネットワークスが買われるなど、多様な成長株への資金流入が目立っている。 ◆東京市場は米株高を好感し日経平均が一時6万7000円台回復 こうした米国の流れを引き継ぎ、10日の東京株式市場では日経平均株価が反発した。前営業日比0.45%(298円39銭)高で取引を開始した日経平均はその後徐々に上げ幅を拡大し、前場中盤には一時2.13%(1400円13銭)高の6万7006円84銭まで上昇して、節目の6万7000円台を回復する場面が見られた。前場引け時点でも同2.02%高の6万6931円48銭と堅調さを維持している。米フィラデルフィア半導体株指数(SOX)の2%超上昇を好感し、東京市場でもアドバンテストや東京エレクトロンといった半導体関連株に買いが先行した。ソニーグループとTSMCが2029年にも熊本県で次世代画像センサー半導体を量産するとの一部報道が好感されたほか、業績見通しを引き上げたリクルートホールディングスがストップ高となるなど、好決算銘柄が相場を押し上げた。TOPIXも0.79%高で前場を終え、東証プライム市場の売買代金は約4兆7800億円に達した。いちよし証券の及川敬司氏は、半導体株の調整が一巡し現在は幅広い銘柄に買いが及んでいると指摘。急ピッチな上昇は一服したものの、時間をかけて上値を試す展開になるとの見方を示した。 ◆日本市場でも実需伴う内需株や国策関連銘柄へ物色が広がる 日本市場の内部でも資金循環の明確な変化が観測されている。ディフェンシブ性の高い日本たばこ産業(JT)の時価総額がNTTを12年ぶりに逆転したことは象徴的である。家計調査で消費支出の減少が示されたこともあり、投資家の関心は景気変動の影響を受けにくい内需株や国策に支えられた実需関連銘柄に向かっている。データセンター向け光ファイバー需要拡大を背景に業績を上方修正した藤倉や、ガスタービン・防衛関連事業の伸長で2026年4〜6月期の純利益が前年同期比97%増となった三菱重工業などが好調である。一方、半導体関連のキオクシアホールディングスは信用取引の強制決済を伴う需給要因で株価が乱高下している。決算発表前のストップ高や夜間取引での下落など不安定な値動きが続くが、業績面ではAI向けSSD需要拡大により平均販売価格が約70%上昇し、7〜9月期の営業利益率が約79.5%に達する計画を示した。同社は上限8000億円の自社株買いや株式分割を発表し、技術面でも積層数から効率重視の設計へ軸足を移すなど、将来の供給過剰リスクに備えつつ市場の適正評価を模索している。 ●重要指標発表と薄商いが重なる来週以降の神経質な相場展開 今後の金融市場の最大の焦点は、米国のインフレ動向を決定づける重要な経済指標の発表である。12日には米消費者物価指数(CPI)、13日には卸売物価指数(PPI)、15日には小売売上高の公表が予定されており、先の雇用統計で示された労働市場の弱さが実際の物価鎮静化に結びついているかが厳しく見極められる。スーパーマイクロ・コンピュータやアプライドマテリアルズなどの決算も、AI投資の収益化進捗を測る上で注視されている。外国為替市場ではドル円が157円台後半で推移し、日米当局による為替介入への警戒感もくすぶる。日本市場はお盆休みを控えて市場参加者が減少し流動性が低下しやすい時期に入り、米国の物価指標や為替の急変動が引き金となって相場全体が振れやすくなる懸念がある。インフレ指標や金利観測の変化次第で、ハイテク株から内需・サービス株への資金移動が一段と加速する可能性もあり、投資家は業種間のローテーション動向に警戒を払いながら、極めて神経質な相場展開への備えを余儀なくされている。 ⸻ ★note:https://note.com/woven_planet #雇用統計 #利上げ #半導体 #資金循環 #日経平均 #AI
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