【ソフトバンクG、Tモバイル株売却。三菱商事、米シェール買収協議】
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ソフトバンクグループは16日、米携帯大手TモバイルUS(NASDAQ: TMUS)株のブロック取引を通じ、約48億ドル(約7000億円)を調達した。さらに三菱商事は、米エネルギー開発会社エーソン・エナジー・マネジメント(Eason Energy Management)の買収に向け、約80億ドル(約1兆1500億円)で最終協議に入っていることが17日、関係者への取材で分かった。それぞれ巨額取引の狙いと背景を探る。
◆ソフトバンクG、Tモバイル株2150万株を売却
ソフトバンクGは16日、Tモバイル株2150万株を1株224ドルで売却した。売却価格は同日終値230.99ドルを約3%下回る水準で、約48億ドルを確保した格好だ。ソフトバンクGは2025年3月末時点でTモバイル株8540万株(持ち株比率7.5%)を保有しており、今回の売却は発行済み株式の約1.9%に相当する。
東京市場では17日、ソフトバンクG株が一時2.3%高の8690円まで上昇。年初来で7.5%下落していた株価は、売却による財務基盤強化を好感し反発した。
ソフトバンクGは孫正義社長が過去の投資売却で成功を重ねてきた手法を踏襲し、調達資金を次世代の人工知能(AI)関連投資に振り向ける計画だ。OpenAIへの最大300億ドル追加出資に加え、データセンターやインフラ整備などへの投資を模索する。ただ、トランプ米大統領の関税政策による米国経済の先行き不透明感が資金調達交渉を難航させているとの見方もある。
今回の売却は、米上場企業による個別の既存株売却としては年初来最大級。ソフトバンクGは長期的に保有株を活用し、高い投資リターンを追求する戦略を継続する。
◆三菱商事、米シェール開発会社買収で過去最高案件に
一方、三菱商事は米テキサス州東部・ルイジアナ州北部のヘインズビル・シェール盆地で天然ガス開発を手がけるエーソン・エナジー・マネジメントの取得に向け、最終協議に入っている。買収額は約80億ドルで、正式発表は数カ月以内とみられる。実現すれば三菱商事にとって過去最大規模のM&Aとなる。
三菱商事はこれまで2011年のチリ銅鉱山買収(約53.9億ドル)など大型案件を手がけてきたが、今回の規模はそれを上回る。財務基盤の強さを背景に、AI普及によって増加が見込まれる電力需要や、脱炭素移行期のクリーンエネルギーとして注目される液化天然ガス(LNG)事業を強化する狙いだ。
ただ、交渉は最終段階に近いものの、相手側との条件折衝で遅れが生じる可能性や、別の買い手候補の動きも注視される。ダラス本社のエーソンはADNOC(アブダビ国営石油)も買収検討を報じられた企業であり、買収競争の行方にも関心が集まる。
市場では買収報道を受け、三菱商事株は17日朝に0.8%安。大和証券の細井秀司シニアストラテジストは「AI需要の高まりを踏まえたエネルギー事業強化は基本的に好材料だが、買収額の大きさへの警戒感も残る」と指摘。岩井コスモ証券の清水範一アナリストは「LNG市況に左右されるリスクも大きく、投資家は具体的条件を見極めたい段階」と語った。
◆巨額投資で狙う次世代成長分野
ソフトバンクGも三菱商事も、今回の資金調達・投資はAIとエネルギーという次世代の成長エンジンを狙った動きといえる。孫社長が率いるソフトバンクGは、AIスタートアップへの巨額出資を通じて新たな収益源を探る。一方、三菱商事はLNGを中心としたエネルギー開発で収益の安定化と脱炭素対応を両立し、グローバル競争力を高めようとしている。
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★note:
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