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個人投資家 医療専門職
【PHR(パーソナル・ヘルス・レコード)の進化で加速化する個別化医療への期待】 (写真:東京の空にも夕焼け 「東京には空がないわけではなく・・・」) かつて、ある医療系雑誌に「苦いカルテ」というコラムがあった。医師が過去の臨床経験の中で苦い思いをした経験を記したもので、ネットもSNSもない時代には貴重な情報源で愛読していた。私の「苦いカルテ」は医師になりたての30年以上前の話である。 喘息で入院した高齢の女性患者さんの担当となった。入院後、尿酸の値が高くなり指導医とも相談して血中尿酸を下げる薬を開始した。まもなく彼女は皮膚のかゆみを訴え、軟膏を処方し皮膚科に相談して、薬疹の可能性も考えて新規開始薬をいくつか中止した。しかし、皮疹は瞬く間に全身に広がり、赤く腫れあがり、やがて水疱を形成し、まるで全身火傷の後のような状態になった。皮膚のバリアが壊れるとそこから感染も生じるし、体に必要なタンパク質も滲出液と同時に失われ、点滴で補う必要がある。しかし、点滴針の刺入部や固定する絆創膏の皮膚から、また発疹が広がって火傷のようになってしまう。皮膚科医と相談しながら各種の軟膏を塗布したガーゼで保護し、場所を変えながら点滴での治療も続けたが、固定が難しくすぐに点滴が抜けてしまう。私も泊まり込んで治療に当たったが、集中治療室に入室後2週間ほどでお亡くなりになった。おしゃべり好きで明るくふくよかな女性であった。 厳しい結果にも拘わらず、懸命の治療に対してご家族からは御礼の言葉に加えて病理解剖の承諾も頂いた。 最終的には尿酸を低下させる薬による重症薬剤性皮膚障害(Steven-Jonson症候群)という判断となった。病理検討会に向けて準備のために過去に何度も入退院していた紙カルテを遠方の倉庫から取り寄せてもらって目を通した。10年以上前のカルテに発疹の記録とその際に投与していた複数の薬剤名の記載のなかに尿酸治療薬の名前を見つけた。その際は軽症で済み外来のカルテには、その情報は引き継がれていなかった。  以来、私は入院患者の担当となるたびに可能な限り以前のカルテを取寄せ目を通し、若い医師にもそう指導してきた。電子カルテの導入以後のデータは検索すればすぐに呼び出せるようになった。一旦、薬剤の副作用を登録すればその患者さんに同じ系統の薬を投薬するときにはアラートが出せる機能も加わった。  20年ほどの時を経て、ある論文をみて衝撃を受けた。例の薬剤に対して重症薬疹を生じる人が持つ遺伝子変異が見つかったというものである。その後、いくつかの薬剤においてこの遺伝子変化がある人は副作用が重症化しやすいという蓄積された。今後はゲノム医療も普及・一般化して、より個々に最適の医療の選択が可能になると期待される。  現在、PHR(パーソナル・ヘルス・レコード)という個々人の医療・健康情報のデータを標準化して病院・健診機関・薬局・介護施設などで共有できるような仕組み作りが加速している。本人もアプリで情報にアクセスできるようになる見込みだが、同時に個人のヘルスリテラシーも向上し、医療の質・安全の向上に寄与することを期待してやまない。 #PHR #パーソナル・ヘルス・レコード #個別化医療 (定期的に寄稿している原稿の要約・改変版です。)
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