【2023新年に思う・感染症と戦争】
これが最終章であって欲しいと願うコロナ禍、第八波のなかで迎える新年となった。昨年、ウイルスは明らかに病原性を落とし、パンデミックも最終盤の様相である。急拡大の中国からの新たな変異株発生が懸念されるが、このまま通常の感冒の一種に落ち着いてくれることを願いたい。
年末の掃除でふと手にした古い画集にあったクリミア戦争を描いた絵に目がとまった。黒海に浮かぶ帆船の軍艦同士の戦闘を描いている。19世紀半ばに地中海へ不凍港を求めて南下政策をとるロシアと当時クリミア半島を治めるオスマン帝国との間で始まり、英・仏がオスマン帝国を支援する形での戦争で、双方で約20万人の死者が出た激闘である。その際に従軍看護師としての活躍で「クリミアの天使」と呼ばれたのがナイチンゲールである。戦傷者への献身的な看護の印象で知られる彼女だが、その大きな功績は野戦病院での衛生管理・感染対策にあるという話を思い出した。
調べると彼女は若い頃から数学に興味を持ち、看護師での実務は約2年余りの野戦病院での活動だけである。しかし、その間に「戦傷より劣悪な衛生環境と感染症」こそが兵の命を奪う主因であることを看破し、清掃・消毒・換気などの環境改善などにより42%に及んだ野戦病院での死亡率を2%にまで激減させる。しかも、軍は当初、看護師の進言に全く聞く耳を持たず、軽んじる男社会の軍幹部たちを説き伏せての偉業である。
英国帰国後はその経験をもとに統計学者と協力し800ページにも及ぶ報告書を作成、レーダーチャートのような図も開発して科学的エビデンスを示し陸軍病院の医療衛生の改革に尽力している。
21世紀になっても同様に感染症と戦争に翻弄されている世界に驚愕しながら、整理整頓のはずが資料を散らかす年末となってしまった。私の年の瀬の片づけはいつもこのような形に終わる。
感染と戦争の終焉を願う兎年、われわれは今年も歴史の真っただ中を生きている。
#ウクライナ #新型コロナ #クリミア #ナイチンゲール
(定期的に寄稿している原稿の要約・改変版です。写真は第八波入りする直前、初めて宇治を訪れ平等院鳳凰堂を拝観しました。一般閉門後の夜間開放のツアーというもので参拝者数は限定され静かに見て回ることができます。何度かの修復を経ながらも、約1000年の時を超えて静かな水面に映し出される美さに感動を覚えました。
https://www.byodoin.or.jp/common/pdf/pamphlet-ja.pdf)