【振り出しに戻った高額療養費制度見直し】
今春、高額療養費制度が大きな話題となった。入院して手術を受けた経験のある方は想起できるだろうが、健康を保っている方には縁遠く、ピンと来ないかもしれない。
高額療養費制度は1か月に支払う医療費に上限を設ける制度で、いざという時に有難みを実感するものだ。高額な医療費による家計への影響を緩和しようという、公的医療保険の重要な役割の一つである。
しかし、近年、医療の対象となる高齢者人口の増加と先進的かつ高度な医療の進歩による医療費の高騰などを受けて、その枠組み自体を見直す必要が議論の俎上に上がったというわけだ。
本制度の1か月に支払う医療費に上限額は収入に応じて決められている。現状より収入区分を細分化して限度額を引き上げる方針が決定されていた。例えば該当者の多い年収650万〜770万円の場合は月額約8万円から14万円の73%増となるものであった。これに対して患者団体などから拙速な改正であるとの声が相次ぎ、最終的には首相が改正を見送る決断を下し、秋までにさらに議論を深めるとして振り出しに戻った。
本制度の適応対象は10年前には大掛かりな手術での入院例が大半を占めていたが、近年は外来での薬剤費でも適応となる人が増えている。月の医療費が1000万円以上の例は2014年に300件から2023年には2156件と約7倍にまで増加しているという。入院・手術は一時的なことが多いが、外来での治療薬は継続されることもあり患者負担は大きい。外来で「治療費のために働いている感じ」と話す患者さんもある。
そのような背景もあり、この春の学会に参加して変化を実感した。以前は病気に対して現存治療より効果があるかどうかという視点に絞って議論されていたが、費用対効果などの医療費の観点が議論されるようになっている。
確かに近年、遺伝子診断の技術や免疫治療、移植医療など画期的だが高額な医療が急増している。急速な技術開発、科学の進歩の速度に経済の進展が追い付いていけない状況なのだと思う。そこをどうバランスをとるか秋までの議論をしっかりと見守りたい。
#医療費 #高額療養費制度 #医療経済
(定期的に寄稿している原稿の要約・改変版です。)