【深夜勤務の健康リスク】(写真:夕陽とBirra Moretti Limone)
今春、トラックドライバーの働き方改革(時間外労働の上限規制免除が撤廃)が「2024年問題」と表現されて話題となった。実は運送業のみならず、医療界も侃侃諤諤の状態にある。医療、電力・ガス、公共交通・流通などの社会基盤インフラには夜間の業務が必須となる。
国内で深夜勤務を含む業務に従事する者は1200万人に上るとされ、うち約20%に「概日リズム障害」を認めるとされる。
人は概日リズムという1日を刻むリズムを持つ。それは、体内の自律神経、ホルモン分泌、深部体温などの変化で刻まれる一方、光や食事、運動活動時間の外敵要因の影響を受ける。
自律神経のうち、いわゆる「戦闘モード」の刺激の交感神経が最も活発になるのは夕方近くで、体温は高くなり、循環器の機能が上昇し血圧も上がり筋肉の反応性も高くなる。この時間帯に運動するのが最も良いパフォーマンス発揮に繋がる。一方、深夜には「休息モード」の副交感神経が優位となり、体温は低下し、消化管の運動が活発となる。
このようなリズムを乱す「夜勤は健康に大きく影響する」という事実は心血管疾患、糖尿病、肥満などに関して以前から知られていた。
近年では乳癌、結腸・直腸癌などのリスクを高めることが指摘されており、夜勤に従事する女性は、乳がんの発症リスクが非従事者に比較して約1.5倍になるとの報告もある。発がん性に関する要因を評価しているWHOの機関、国際がん研究機関(IARC)は「概日リズムを乱す勤務」を発がん性リスクが2番目に高いグループ(ヒトに対しておそらく発がん性がある暴露)に認定している。
このような背景を受けて、デンマークでは「20年以上、週に1回以上夜勤に従事」後に乳がんを発症した看護師の労災認定が認められている。
社会インフラに必須の業務の遂行と、従事する人の健康の確保とをどのよう両立するか奥深い眠りの科学のさらなる進歩に期待したい。
#深夜勤務 #健康 #がん
(定期的に寄稿している原稿の要約・改変版です。)