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どんこめ🚃
元鉄道員・元労働組合員・3DCGクリエイター
🏳️
電車の汽笛には電子音が鳴る電笛と、圧縮空気で鳴る空笛(いわゆるラッパ)がある。基本的に汽笛といえば空笛のことであり、電笛は補助装置と言う扱いになっている。  これは騒音問題や、踏切削減などにより根本的に事故が減少傾向にあったことが、うるさ過ぎない電笛の登場を促した側面もありそうだ。(あと冬だと配管が凍結したりして汽笛が上手くならないこともしばしばあるのだ。)  したがって、工事作業員への合図は規則上は汽笛合図、空笛を使うことを原則としている。だが明らかに既に退避完了している場合などは、汽笛ではなく電笛で済ませてしまう場合も多々ある。実際作業員へ必要以上に威嚇することを気にする運転士もいるものだ。  とはいえ、こんなことがあった。 先輩の技術職(保線や電気)の人が運転室便乗してきた時にまさにその話になって、「電気と空気どっち使ってる?」と聞かれ、 「接近で空気、了解で電気を」という旨を答えた。それが危険を知らせつつ、近隣への騒音対策的にも折衷案だと感じていた。 先輩は「なるほどね」と答えていたのが印象深い。 「ただ、俺たちにとっては死活問題だから、ガンガンラッパ(空気)使ってくれていいぜ」  実はこれには理由があった。  比較的最近、見張員をやることになった人の合図が「遅い」という噂が立っていたらしいのだ。  もしかしたら運転士の方の合図が遅いのでは?という可能性も考えてのことだったらしい。実際、空笛が聞こえれば監視員からの合図が無くても退避はできる。(それはそれで遅いとは思うのだが) 「あいつが見張員だった時は、ちょっと気をつけてくれないか」 実はその新見張員というのも、顔と名前を知ってる先輩だった。 それから数日経ったのち、運転中の前方に列車監視員が見えた。例の人だった。 そこは住宅密集地が線路から近く、急カーブの入口で元々速度を落としてゆっくり通過する場所だから、あまり空笛を使いたくない場所の1つだった。過去に苦情をよく入れてくる人が住んでいたという知識もあったが、先輩の言っていたことが頭にあって、空笛を大きく鳴らした。了解の方でも空笛を使った。まさかとは思ったが、制限速度よりも若干落とし目に左カーブを曲がった。  するとどうだろう、作業員の1人が今まさに線路から出る瞬間が見えた。普通、退避完了した後ならば、作業員は列車に向かって手を挙げて退避完了済みであることを合図する。ブレーキ段数を上げて電笛を使った。  手前側にいた作業員が奥の方を見る、線路から出た作業員は手を挙げるが、「え、もう来たの?」と言わんばかりの驚いた表情をしているのが見えた。  慎重に通常よりも速度を落としながら通過したから、見慣れている人ならば違和感があった通過だったはずだろう。幸い、他に線路内に作業員はいなくて、無事通過することができた。  それから数日後、再び先輩の便乗があった時にその時あったことを話した。どうやら1回2回ではなかったらしい。 「まあそんな訳だから、なるべく俺たちとしてはガンガン使ってほしいのよ、ラッパを」  近所の苦情と仲間の命。 どちらを優先するべきかは、言うまでもなかった。 幸いその手の事故は、勤めていた会社では聞いたことがない。
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