『スティングのコンサート ①』
昨年、夫が「来年スティングが来るみたいだね」と教えてくれた。
誰かがSNSで言っていたらしい。
「行きたい!いや行く!」と即座に宣言した私。
「いいんじゃない?」と返事をした夫だったが、どうも自分が一緒に行く気でいたようだ。
でも彼は洋楽にあまり関心がないし、もちろんスティングの曲もそんなに知らない。
しかもお高い。
夫婦で行くのは効率が悪い。
そんなこんなで私は彼の意向を考慮に入れず、中学の時からの親友にすぐに声をかけた。
彼女も二つ返事で行くと言ってくれた。
もうチケット予約が始まっていたので、すぐにコンビニで予約を入れた私であった。
月日は流れ、無事にスティングのコンサートの日になった。
私も友達も体調良くこの日を迎えられたことに、この上ない喜びを感じる私であった。
夜7時からのコンサートだったが、12時に待ち合わせをして、私は朝7時の高速バスで東京に向かった。
東京駅の丸ビルで、ランチとお茶で時間をつぶす。
会うのも久々だったので、話しているうちにあっという間に5時。
有明アリーナはゆりかもめでほぼ終点の場所でけっこう遠い。
駅から徒歩9分と書いてあった。行けばわかるだろうとたいして下調べもしなかったが、案の定、駅で地図を見ている人はほぼスティングのコンサートに行く人たちだった。
ぞろぞろ歩く人たちの流れに乗って歩く。
迷わず有明アリーナに到着。
まだ6時前だった。
グッズが見たい、という友達と外にあるグッズ売り場に行くと、すでに長蛇の列が出来ていた。
U字になっていて、直線にすれば300mくらいあったのではないか?
私はあまりグッズに関心がなかったが、時間もあるし、じゃあ並ぼうということになった。
「買うとするなら何買う?」
「ねー、見なきゃわかんないけど、あのTシャツなんかいいんじゃない?」
と売り場近くから始まる列から垣間見えるグッズを品定め。
「あーあのカーキー色っぽいやつね。あれなら私も買おうかな。」
「おそろいでパジャマにしちゃう?ww」
などと二人のおばさんが、若い娘ばりの会話を楽しむ。
しかしそれにしても長い列であった。
こんなことならお茶なんてしないで、先に来てればよかったねー、と話したが後の祭り。
ようやく順番が来た。
そうしたらなんと、私たちが狙っていたTシャツはすでに売り切れていた。
えー――、どうする?ってことになる。
友達は「なんかこれで(もう一つの青いTシャツ)5500円って高くない?私はやっぱいいかな。」とテーブルから後ろに後ずさりした。
他にもあまり魅力的なグッズが無かったのである。
私は、この並んだ努力はなんだったの?無駄にしていいの?という気持ちから買うことを決意。
「私はこのTシャツください。」とお金を払おうとしていたら、
「じゃ、私もこれください。」とさっき後ろに下がったはずの友達が、突然ぬっと横に出てきてびっくり。
「え?いいの?いらないんじゃないの?」と聞くと、
「だってサー、○○(私の名前)がこれを持っていたら、きっと後で私はほしくなるもん。買えばよかったって思いたくないじゃん。」という。
なんかごめんね、って感じだったが、こうして二人は本当は欲しくなかったTシャツをにぎりしめ、中に入場したのであった。