一、孫思邈の十二少
唐の時代に孫思邈(そんしはく)という名医がいた。この人は太白山に隠棲してその術を
得たといい、治療すこぶる妙を得ているので、隋朝以来しばしば爵位や俸禄を授けようとしたが固辞して受けず、六朝時代のこともよく記憶していて、誰もその幾歲であるか知らなかったという非常に長寿の人であった。しかし、この人は不老不死というような神仙談を試みるのでもなく、人が長生の術を問うに対しては十二少の説を述べるだけであったという。
すなわち、
善く生を摂する者は常に
思を少なくし、念を少なくし、欲を少なくし。事を少なくし、語を少なくし、笑を少なくし、愁を少なくし、楽を少なくし、喜を少なくし、労を少なくし、好をすくなくし、悪を少なくせよ。この十二少を行うは性を養うの都契なり。
これは全く心身両面に渉る摂生法である。